と大地に見守られて、私はここに立っている。



と友に



澄んだ青空に鐘の音が響く。
どこか物悲しいその音に、自然と熱いものが込み上げてきたが気力を振り絞ってなんとか耐えた。


オーブ連合首長国領オノゴロ島

マスドライバー跡地で戦死者の追悼式が行われている。


停戦から一年、世界はようやく平穏を取り戻しつつある。
それはあくまでも表面上のものであるが。

水面下での政治的な利害の駆け引き、ブルーコスモスの暴動、地球のエヌジャマー問題
と、問題は今も後を尽きない。



それでもどうしてもこの日この場所で死者の魂をオーブの地へと還したかった。




今日はあの長かった戦争が終わった日だから。
ここは自分の父が、オーブの獅子達が眠る場所だから。


そっと目を閉じ、吹く風に身を委ねる。



停戦後、初めてこの地に足を踏み入れた時は震えが止まらず、心が千切れそうな痛みに
アスランに縋り付いて思い切り泣いた。
あの大きな手がもうないこと、二度と自分の名を呼んでもらえないこと。
耐え切れないほどの喪失感に赤子のように涙した。
そんな私を、アスランは何も言わずにただ優しく抱きしめてくれた。

そのおかげか、その時よりは幾分か落ち着いてこの場所に立っていられる。



追悼式では次々に戦死者一人一人の名前が読み上げられていく。
その中には宇宙に散った友人たちの名前もあった。


アサギ=コードウェル

マユラ=ラバッツ

ジュリ=ウー=ニェン


女が三人揃って姦しいと読む、を地でいっていた賑やかな友人たち。
今でも鮮やかに蘇る、あいつらの笑い声。
いつも自分をからかってばかりいた

恋とかの話が大好きで、占いや流行のファッションに敏感で…。


普通の幸せが似合うやつらだった。そしてその幸せを掴むはずだったのに。


私は生き残り、アサギ達は死んでしまった。
もうアサギ達と騒いでエリカにお説教されることもない。
モルゲンレーテに明るい笑い声が響き渡ることもない。
大切な時間、当たり前だった日常は今では遠く、それ故、泣けるくらい優しい。



奪われ、奪ったものは多く、失ったものは皆大きすぎる。



そんな思いをもう誰にもさせたくないから、代表首長の座に就いた。
右も左も分からない手探り状態だが、少しでも早く国民が安心して暮らせるようにする為に。
犯した罪に苛まれ、怯えなくて良いように。



閉じていた目を開け、しっかりと前を見据える。




大丈夫。きっと大丈夫だ。



自分の気持ちが揺らいでも大地を踏みしめれば父達が支えてくれる。
寂しくなっても宇宙を見上げれば友人達が励ましてくれる。
ならば私は皆が命を懸けて守ったこの大地をなんとしても守り抜こう。
父が遺した信念を継いで、3人が命を賭けて守ってくれたこの命が尽きるまで。


空と大地に見守られて、私はここに立っている。



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