柔らかい日差しの中で、大切な君と微睡む
太陽の香りや暖かさを全身で感じて

そんな事がこの上ない幸福


                         



窓から部屋に差し込む陽の光に、眠りの淵に落ちていた意識がゆっくりと覚醒する。
降り注ぐそれを眩しそうに見つめて、ベッドの中で一度ぐっと伸びをした。
ベッドサイドの時計を見ると午後三時を少し過ぎたところだった。

あんまりいい天気だったからうたた寝しちゃったんだ

まだ完全には働かない頭で、それでもやりかけの仕事に戻ろうと体を起こし掛けたが、途中で何かに服を引っ張られて
それ以上の動きが取れない。なんだろうと思い何気なく横を見やると、そこにはキラの服の端を掴んですやすやと熟睡
しているカガリの姿があった。


「え、え?何でカガリ・・・・・」
驚いて少し体を動かせば、はらり、とブランケットが肩から落ちた。
そうか、と納得する。
春めいてきたとはいえ、カーテンを揺らす風は少々肌寒い。
きっと風邪を引くといけないと思ってブランケットをかけてくれたに違いない。カガリはこういうさり気ない気遣いが出来る子だ。
かけてくれた後は、この陽気に負けてカガリまでも一緒に寝てしまったのだろう。
桜色の唇からは気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。
余りに幸せそうに寝ているものだからちょっと悪戯心が湧いて、ふっくらした頬をくにくにとつまんだり軽く引っ張ったりするが
眠りが深いのか起きる気配はない。
うーん、と唸って眉間に皺を寄せはしたが、体を捩ってシーツに顔を摺り寄せただけだった。
『無邪気』という言葉がぴたりと当てはまる寝顔に知らず口元がほころぶ。

あどけない顔

お互いが双子だと知らされてから随分経つ。
知った時は苦しくて仕方なかったその事実。出生の秘密、実の両親、幾多の命の上に成り立つ自分の命。
そんな罪悪感や苦痛を和らげてくれたのはアスランとラクスと、そして目の前で眠る少女だった。
彼らは自分の存在を、生きている事を受け入れ、喜んでくれたから。

今では顔を見合わせて「あんまり似てないね」と笑い合う事も出来るようになった。
どちらが姉か、兄が言い合う事も。
そして僕らが言い合っていると、親友は「双子なんだから関係ないだろ」と呆れ顔で言い、ピンクの髪の歌姫は鈴が鳴るような
声で楽しそうに笑うのだ。そういう四人での何気ない会話やふざけ合いが今の自分には何より嬉しい。


体を丸めて眠っているカガリはまるで金色の子猫のよう


ずっとお互いの存在さえ知らなかったのに、何故かずっと前から知っていたような既視感。
こんなに近くで女の子が、カガリが眠っていても湧き上がるのは慈しむような気持ちだけ。
ただただ愛おしく、彼女が光の中で笑っていられるようにと願う。


「でも、こんな顔、アスランには見せないでよね?」
沈着冷静で通っているアスランだが、カガリの前ではこれでもかという位情熱的だ。
カガリに骨抜きになっている親友を思い浮かべて複雑な気持ちになった。
そんなアスランにこんな無防備なカガリを見せたら一体どうなるか・・・・。

辛い思いを沢山したアスランだから、幸せになってもらいたいという気持ちに偽りはない。
が、大切な半身がアスランのものになってしまうのは少し面白くないのも事実で。
そう簡単に渡してやらない、と今はここにいないアスランに向けて呟いた。




ふわぁ
一つ大きく欠伸が出る。
再び睡魔の波が寄せてくる。

カガリが目を醒ますのはまだ先になりそうだ。


なら僕も寝てしまおう。


ずり落ちたブランケットを取り、自分とカガリに被せる。
外はぽかぽか良い天気。
隣には日差しより温かな半身の体温。




心地良い睡魔に抗う事なくキラの意識はすとんと落ちた。





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